会社員のまま物販を始めるとき、必ず気になることが2つあります。
- 会社に知られてしまわないか
- 確定申告はどこからやるのか
ネットで調べると、対策のテクニックのような情報が出てきます。ですがその前に、そもそもどういう仕組みで会社に伝わるのかを知っておいたほうがいいです。
仕組みが分かれば、自分が今どういう状態なのか判断できます。
この記事は制度の仕組みを説明するものです。会社に隠す方法をお伝えするものではありません。
就業規則で副業が禁止されている場合、隠して続けることには相応のリスクがあります。まずは規則を確認してください。
また、税金の個別の判断は税務署や税理士の領域です。実際の申告は、ご自身の状況を持って相談してください。
- 会社に伝わるとしたら、どこから伝わるのか
- 「20万円」の基準が、実はややこしい理由
- 物販ならではの落とし穴(在庫は経費にならない)
- 始めた初日からやっておくこと
まず就業規則を確認する

順番として、ここが最初です。
副業に関するルールは会社によって違います。全面的に禁止しているところ、届け出れば認めるところ、特に何も定めていないところ。まず自分の会社がどれなのかを確かめてください。
「届け出れば大丈夫」の会社が増えている
近年は副業を認める方向に変わってきている会社が多くあります。
隠すより、届け出るほうが精神的にずっと楽です。いつバレるかを気にしながら続けるのは、それだけで消耗します。
禁止されていると思い込んでいたが、確認したら届出制だった、というのはよくある話です。
禁止されている場合
禁止されているのに続ける、という判断はご自身の責任になります。
この記事では、その場合の隠し方はお伝えしません。知られたときに何が起こるかを含めて、判断してください。
会社に伝わるとしたら、どこから伝わるのか

仕組みの話に入ります。ここを知っておくと、正しく判断できます。
住民税の仕組み
会社員の場合、住民税は給与から天引きされる形が一般的です。
このとき、いくら天引きするかを決めるために、自治体から会社に通知が届きます。そこには住民税の金額が書かれています。
もし給与以外の所得があると、その分も含めた住民税が計算されます。すると「給与の額に対して、住民税が多い」という状態になります。
気づかれるとしたら、多くはここです。
確定申告の書き方で選べる部分がある
確定申告書には、給与以外の所得にかかる住民税を、自分で納めるか、給与から天引きしてもらうかを選ぶ欄があります。
「自分で納付」を選ぶと、その分の納付書が自宅に届き、自分で納める形になります。
ただし、これは隠すための仕組みではありません。もともと納め方を選べるようになっているだけです。また、自治体の運用によっては希望どおりにならないこともあります。
実際にはもっと単純な経路で伝わる
正直なところ、税金の話より現実的な経路があります。
- 同僚に話してしまう
- SNSで実績や商品を出していて、見つかる
- 出品者情報に本名と住所が出ていて、検索で行き着く
- 勤務中に作業していて気づかれる
3つ目は物販ならではです。販売先によっては、出品者の氏名や住所が購入者に見える形で表示されます。始める前に、自分の情報がどう見えるのかを確認しておいてください。
「20万円」の基準は、思ったより複雑

「副業の利益が20万円以下なら申告不要」という話を聞いたことがあると思います。
ここには、いくつか注意点があります。
注意1:「売上」ではなく「所得」
いちばん多い勘違いです。
所得 = 売上 − 経費
100万円売れていても、経費が85万円なら所得は15万円です。売れた金額そのものではありません。
注意2:所得税と住民税で扱いが違う
ここが見落とされがちなところです。
「20万円以下なら申告不要」は所得税の話であって、住民税には同じ基準がありません。所得税の確定申告をしない場合でも、住民税の申告が必要になることがあります。
お住まいの自治体の案内を確認してください。多くの自治体が、住民税の申告についてホームページで説明を出しています。
注意3:条件によって当てはまらない
そもそも確定申告が必要な人もいます。医療費控除やふるさと納税で申告する場合など、確定申告をするなら副業の所得も含めて申告することになります。
「20万円以下だから何もしなくていい」と単純には決められない、ということです。
物販ならではの落とし穴

ここが、一般的な副業の記事にはあまり書かれていない部分です。
売れ残った在庫は、その年の経費にならない
物販でいちばん驚かれるところです。
仕入れにかかったお金のうち、経費になるのは売れた分だけです。売れ残っている商品の仕入れ代は、その年の経費になりません。
| 手元の現金 | 計算上の所得 | |
|---|---|---|
| 50万円ぶん仕入れた | 50万円減る | 変わらない |
| そのうち20万円ぶんが売れた | 売れた分だけ入る | 20万円ぶんが経費になる |
| 30万円ぶんが売れ残った | — | 経費にならない |
つまり、「たくさん仕入れたから今年は所得が減る」とはなりません。
財布のお金は減っているのに、計算上の所得は減っていない。この状態になると、手元に現金がないのに税金を払うことになります。
年末に大きく仕入れるときは、この点を必ず頭に入れておいてください。
だから在庫を数えておく必要がある
申告のときに、年末時点で在庫がいくらあるかを出す必要があります。
倉庫に預けている分、自宅にある分、まだ届いていない分。普段から記録していないと、ここで相当苦労します。
在庫の管理方法は、こちらにまとめています。

経費になるもの、ならないもの
物販で出てくる主なものを挙げます。判断に迷うものは、税務署や税理士に確認してください。
| よくあるもの | 扱い |
|---|---|
| 売れた商品の仕入れ代 | 経費になる |
| 売れ残っている商品の仕入れ代 | その年の経費にならない |
| 販売先に払う手数料 | 経費になる |
| 梱包材・送料 | 経費になる |
| 仕入れに行った交通費 | 事業のためなら経費になる |
| 自宅の家賃・光熱費 | 事業で使っている割合の分だけ |
| 私用と兼ねているもの | 使った割合で分ける必要がある |
最後の2つは「家事按分」と呼ばれるもので、どの割合にするかは説明できる根拠が必要です。ここは自己判断せず、確認しながら進めてください。
始めた初日からやっておくこと

あとから遡ってやると地獄を見るので、最初からやっておくべきことを挙げます。
- 事業用の口座を分ける(生活費と混ぜない)
- 領収書とレシートを全部とっておく(月ごとに封筒に入れるだけでいい)
- 仕入れた日・商品・金額・個数を記録する(表計算ソフトで十分)
- 売れた日・金額・手数料を記録する(販売先からデータで落とせる)
とくに1番目。これをやっておくだけで、後の作業が半分になります。
1年分をまとめてやろうとすると、記憶も記録もあいまいになっていて、必ず苦しみます。月に一度、30分だけ整理する時間を作るほうが、はるかに楽です。
開業届を出すかどうか
継続して事業として行うなら、開業届を出すことになります。
出すと帳簿づけの方法によって受けられる控除があります。一方で、失業給付など他の制度との関係が出てくる場合もあるので、当てはまる方は先に確認してください。
本業と両立させる時間の作り方

制度の話から離れますが、続けられるかどうかを決めるのは結局ここです。
作業を「まとめられる形」を選ぶ
会社員がいちばんつらいのは、いつ発生するか分からない作業です。
注文が入るたびに梱包して発送する形だと、平日の夜に毎日それをやることになります。売れれば売れるほど、時間が削られていきます。
逆に、まとめて倉庫に預けて、あとは任せる形なら、作業は納品するときの1回で済みます。会社員には、こちらのほうが向いています。
曜日を決めてしまう
「時間があるときにやる」だと、続きません。
週のどこかに「この日はまとめてやる」という枠を決めてしまうほうが、結果的に回ります。仕入れの検討、納品の準備、数字の確認。まとめて1日でできます。
やらない日を決めておく
意外と大事です。
毎日スマホで売上を確認していると、気持ちが落ち着きません。売れていない日を見ると不安になり、余計な値下げをしてしまいます。
数字は週に1回まとめて見れば十分です。そのほうが判断も安定します。
記帳は月に一度
前の章で書いた記録も、月に一度まとめてやると決めておいてください。
毎日やろうとすると続かず、年に一度にすると地獄を見ます。月に一度が、いちばん現実的な間隔です。
よくある質問

不用品を売っただけでも申告が要りますか
自分が使っていた生活用品を売った場合と、売る目的で仕入れたものを売った場合とでは扱いが違います。
後者は事業としての取引になります。「不用品の延長」のつもりでも、繰り返し仕入れて売っているなら、そこは分けて考えてください。
赤字なら何もしなくていいですか
赤字でも、申告しておくことで扱いが変わる場合があります。
何より、赤字だと自分で思っているだけで、計算したら黒字だったということがあります。売れ残りの在庫を経費に入れて計算していると、そうなります。まず正しく計算してみてください。
会計ソフトは必要ですか
取引の件数が少ないうちは、表計算ソフトでも足ります。
ただ、物販は件数が増えやすい商売です。手作業がつらくなってきたら、その時点が切り替えどきだと思ってください。
本業に支障が出ないか心配です
物販は作業の量が読みやすいので、時間を区切りやすい部類です。
ただし、1件ずつ梱包して発送する形を選ぶと、売れるほど作業が増えます。会社員をしながらやるなら、そこは最初に考えておいたほうがいいところです。

まとめ

- まず就業規則を確認する。届出制の会社が増えている
- 会社に伝わる経路は住民税の通知。ただし実際は「人に話す」「SNS」「出品者情報」のほうが多い
- 「20万円」は売上ではなく所得(売上 − 経費)
- 20万円の基準は所得税の話。住民税には同じ基準がない
- 🔴売れ残った在庫はその年の経費にならない。現金がないのに税金を払う状態が起きる
- 年末時点の在庫を出す必要があるので、普段から数えておく
- 初日から口座を分ける・領収書を残す・仕入れと売上を記録する
税金の話は面倒に感じますが、やることは「記録を残す」のひとことに尽きます。
そしてその記録は、申告のためだけのものではありません。自分の商売がいくら生んでいるのかを知るための数字でもあります。結局は同じものを見ることになります。
個別の判断が必要なところは、税務署の相談窓口や税理士に確認してください。無料の相談会を開いている地域もあります。

