
Amazonの広告費が高すぎて、利益がほとんど残らないんです…。



とりあえず入札額を下げてみたら、今度は売上まで落ちてしまって。
広告費の請求を見て、思わず画面を閉じたくなる。Amazonで広告を回している個人セラーなら、一度は通る場面だと思います。
そして多くの記事が、この悩みに対して「入札額を下げましょう」と答えて終わります。
ですが、実際にやってみた方はご存じのとおり、入札を下げると広告費と一緒に売上も落ちることがよくあります。
広告費は減ったのに、利益は増えていない。むしろ在庫が動かなくなって悪化した、というケースすらあります。
理由はシンプルで、「広告費が高い」の原因が入札額とは限らないからです。
クリック単価は、あなたの入札額だけで決まっているわけではありません。
ライバルの入札、キーワードと商品の関連性、掲載される枠の種類——複数の要素が重なって、最終的な1クリックの値段になっています。
この記事では、「広告費が高い」を3つの症状に切り分け、原因を4つに分解し、下げる順番を並べるところまでやります。
入札を触るのは、いちばん最後です。
先に結論だけ書いておきます。
広告費が高いと感じたとき、最初に触るべきなのは入札額ではなく「どの検索語に出しているか」です。ここを直さずに入札だけ下げると、広告費と売上が同じ割合で減るだけで、利益はほとんど変わりません。
- 「広告費が高い」は3種類あり、それぞれ打ち手がまったく違うこと
- クリック単価が上がってしまう構造(オークションと関連性)
- クリック単価を押し上げている4つの原因と、その見分け方
- 広告費を下げる正しい順番(入札を触るのは最後)
- 「どこまで下げれば黒字か」を決める損益分岐点の計算方法
※この記事に出てくる数字は、説明のために作った架空のモデル計算です。
実際の手数料率やクリック単価はカテゴリ・商品・時期によって変わりますので、ご自身の管理画面の数字に置き換えて読んでください。
また、Amazonの広告システムの内部の計算方法はすべてが公開されているわけではないため、仕様に関わる部分は公式ヘルプで最新の情報をご確認ください。
「Amazonの広告費が高い」の中身は、実は3つに分かれる


まず、ここを分けないと話が前に進みません。「広告費が高い」と感じているとき、実際に起きていることは次の3つのどれかです。
そして3つとも、やるべきことが正反対になることすらあります。
広告費は、乱暴に書くとこう分解できます。
広告費 = クリック単価 × クリック数
そして、広告からの売上 = クリック数 × 購入率 × 客単価
つまり「広告費が高くて苦しい」という感覚は、①クリック単価が高い、②クリック数のうち買われないクリックが多い、③売れてはいるが商品の利益率が広告に耐えていない、のいずれかから来ています。
順に見ていきます。
症状①:クリック単価そのものが高い
1クリックに100円、200円と取られているパターンです。クリック数は多くないのに、金額だけが膨らみます。
「アクセスは大して増えていないのに請求だけ重い」と感じるなら、これです。
このタイプは、キーワードの選び方と入札戦略が原因になっていることが多いです。
とくに、みんなが欲しがる大きなキーワードで正面から殴り合っていると、単価は簡単に跳ね上がります。
見分け方は簡単で、管理画面の「クリック単価(CPC)」の平均を見るだけです。
商品の粗利額と比べて、粗利の10分の1を超えるクリック単価になっていたら、かなり厳しい戦いをしています。
粗利1,000円の商品で1クリック150円なら、6回クリックされるまでに1回売れないと赤字、という計算になるからです(150円×6回で900円、7回目で1,050円となり粗利を超えます)。
症状②:クリック数は多いが、買われないクリックが混じっている
1クリックは安いのに、クリック数が異常に多く、合計すると高い。
クリック率(CTR)は悪くないのに購入率(CVR)が低い、というパターンです。
これは「買う気のない検索」に広告が出てしまっている状態です。
たとえば「〇〇 使い方」「〇〇 とは」「〇〇 レンタル」「〇〇 中古」のような、購入直前ではない検索語に出ていると、クリックはされても買われません。
除外キーワードの設定でかなり改善できる領域です。
このタイプの良いところは、直すと広告費だけが減って、売上はほとんど減らない点です。
買われていないクリックを止めるだけなので、失うものがありません。
もし自分がこれに当てはまるなら、この記事の中でいちばん先にやるべきなのは除外キーワードの設定です。
症状③:クリックも売上もあるが、利益が残っていない
広告経由で売れてはいる。ACOS(売上に対する広告費の割合)も30%くらいで、数字だけ見るとそこまで悪く見えない。
なのに月末に計算すると、手元にほとんど残っていない。
これは広告の問題というより、その商品の利益率が広告に耐えられていないケースです。
粗利率が20%の商品にACOS30%の広告をかければ、当然赤字です。この場合、いくら広告を調整しても根本は直りません。
直すべきは広告ではなく、商品の利益率か、仕入れ値のほうです。
この3つは、同時に起きていることもあります。ただ、いちばん金額が大きく動いているのはどれかを1つ選んでください。
全部を同時に直そうとすると、たいてい全部が中途半端になります。
| 症状 | 管理画面で出る特徴 | 効く打ち手の方向 |
| ①単価が高い | クリック単価が高い/クリック数は少ない | キーワード階層と入札戦略の見直し |
| ②無駄クリックが多い | クリック数が多い/購入率が低い | 検索用語レポート+除外キーワード |
| ③利益が残らない | 売れている/ACOSは普通/なのに赤字 | 粗利率と損益分岐ACOSの再計算 |
どれに当てはまるかを決めるために、次の4つを先に確認してください。
ここが埋まらないうちは、広告の設定をいじっても手応えが出ません。
- 過去30日の「クリック単価(CPC)」の平均を出した
- 過去30日の「購入率(CVR)」を出した
- その商品1個あたりの「粗利率」を計算してある
- 3つを並べて、①②③のどれが自分に当てはまるか決めた
ここを決めずに調整を始めると、たいてい遠回りになります。
逆に言えば、この3分類さえできれば、この先で紹介する打ち手のうち自分に必要なものだけを選べます。
そもそもクリック単価はどう決まるのか(オークションと関連性)


「広告費が高い」を根本から直すには、クリック単価がどうやって決まっているかを知っておく必要があります。
ここを知らないまま入札額だけをいじると、なぜ下がらないのかが分かりません。
入札は「言い値」ではなく、オークションの上限額
まず大前提として、あなたが設定している入札額は「1クリックにここまでなら払います」という上限であって、必ずその金額を取られるわけではありません。
Amazonのスポンサープロダクト広告は、検索が発生するたびに、そのキーワードに入札している広告主どうしでオークションが行われる仕組みです。
そして課金額については、落札した広告主は「次に高い入札額をわずかに上回る金額」を支払う形になると一般に説明されています(詳しい仕様や表現は変わることがあるため、必ず公式ヘルプでご確認ください)。
ここが重要です。
実際のクリック単価を決めているのは、あなたの入札額ではなく「2番手の入札額」です。つまり、ライバルが強気に入札しているキーワードでは、あなたが何をしようとクリック単価は高止まりします。
| あなたの入札 | 2番手の入札 | 実際のクリック単価(イメージ) | |
| ライバルが弱いキーワード | 100円 | 40円 | 約40円 |
| ライバルが強いキーワード | 100円 | 95円 | 約95円 |
| 入札を下げた場合 | 60円 | 95円 | そもそも表示されにくくなる |
※上の表は仕組みを分かりやすくするための架空のモデル計算です。実際は後述の関連性なども影響します。
この表の3行目が、多くの方がハマる罠です。
ライバルが95円で入札しているところに60円で入っても、安く出るのではなく、出なくなるだけ。
広告費は減りますが、売上も一緒に消えます。「入札を下げたら売上が落ちた」の正体は、これです。
入札額だけでは勝てない ── 関連性という2つ目の軸
そしてもう一つ。オークションで表示される広告は、入札額の高さだけで決まっているわけではないと説明されています。
Amazonは広告の掲載順位について、入札額に加えて「その検索語に対して、その商品がどれだけ関連しているか」「買われる見込みがどれくらいあるか」といった要素を考慮すると説明しています。
具体的な計算式は公開されていないため断定はできませんが、少なくとも「金額を積めば必ず1位」という単純な仕組みではない、という点は押さえておいて損はありません。
実務的に大事なのは、この逆の見方です。
関連性が低い商品は、同じ枠を取るためにより多くのお金を払うことになりやすい——つまり、商品ページが弱いと、広告費は構造的に高くなるということです。
ここまでをまとめると、クリック単価が上がる要因は次の3つに整理できます。
- ライバルの入札が強い(=キーワードの選び方の問題)
- 関連性が低いと判断されている(=商品ページと検索語のズレ)
- 自分で上限を上げている(=入札戦略と掲載枠の設定)
もう一つ覚えておきたいのが、1日の予算はクリック単価を下げてくれないという点です。
予算を1日1,000円に絞れば、その日に使う金額の上限は決まります。
ですが、1クリック200円という単価が150円になるわけではありません。
予算の設定は「使いすぎを止めるブレーキ」であって、「安く買う方法」ではない、ということです。
ここを混同したまま予算だけ絞ると、表示される時間帯が減って売上が落ちるだけ、という結果になりがちです。
ここから先は、この3つを具体的な4つの原因に落として見ていきます。
原因1:ビッグキーワードで正面から戦っている


Amazon広告費が高い個人セラーの、いちばん多いパターンがこれです。
「財布」「水筒」「加湿器」のような、検索する人が多く、大手も中国系セラーも全員が入札しているキーワードに、正面から入札している状態です。
気持ちは分かります。検索数が多いほうが売れそうに見えますし、そこで1位を取れたら気持ちがいい。
ただ、前章のとおり、クリック単価を決めているのは「2番手がいくら払う気か」です。
資金力のある競合が並んでいる場所は、個人セラーが体力勝負をしていい場所ではありません。
検索数が10分の1でも、売上はそこまで落ちないことがある
ここで多くの方が誤解しているのが、「検索数が減る=売上が減る」ではないという点です。
検索語は、ざっくり3つの層に分かれます。
- ビッグ(1語):「水筒」── 検索数はいちばん多いものの、その人が何を求めているかは分かりません。競合も最も強い層です。
- ミドル(2語):「水筒 保温」── 求めているものが少し見えてきて、競合もやや減ります。
- スモール(3語以上):「水筒 保温 500ml 直飲み」── 検索数は少ないものの、買う直前の人が集まります。競合も薄い層です。
下の表は、この3層で広告を回したときのイメージです。すべて架空のモデル計算ですが、構造を掴むには十分です。
| ビッグ | ミドル | スモール | |
| クリック単価 | 120円 | 70円 | 40円 |
| クリック数(月) | 500 | 200 | 60 |
| 購入率 | 2% | 5% | 12% |
| 注文数 | 10件 | 10件 | 7件 |
| 広告費 | 60,000円 | 14,000円 | 2,400円 |
| 1注文あたりの広告費 | 6,000円 | 1,400円 | 約343円 |
注文数はビッグもミドルも同じ10件。なのに、広告費は4倍以上の差がついています。
スモールに至っては、注文数が3割減っただけで広告費は25分の1です。
広告費を下げたいなら、まず「戦う場所」を変えるのがいちばん効きます。入札額を10円下げるより、キーワードを1階層下げるほうが、効果は桁で違います。
実際の進め方としては、いきなりビッグを止めるのではなく、ビッグ用のキャンペーンとスモール用のキャンペーンを分けるところから始めるのがおすすめです。
分けておけば、予算の配分を後から自由に変えられます。混ざっていると、どちらが食っているのか分かりません。
あわせて確認したいのがマッチタイプです。
キーワードには「部分一致」「フレーズ一致」「完全一致」の3種類があり、上から順に広く拾います。
- 部分一致:関連しそうな検索語まで広く拾う。発見には向くが、無駄クリックが混ざりやすい
- フレーズ一致:その語順を含む検索語に出る。バランス型
- 完全一致:ほぼその言葉の検索だけに出る。狙い撃ちしたいときの本命
広告費が高いと感じているなら、売れている検索語だけを完全一致で切り出し、別キャンペーンで育てるのが定石です。
部分一致は「探すための場所」、完全一致は「刈り取る場所」。
この2つを同じキャンペーンに同居させると、どちらの成果なのか分からなくなります。
原因2:除外キーワードを設定していない


次に多いのがこれです。とくにオートターゲティング(自動)だけで回している方は、ほぼ確実にここで漏れています。
オートは、Amazonが「この商品に合いそう」と判断した検索語に自動で広告を出してくれる機能です。
手軽で、始めたばかりの時期には有効です。ただし、これは「本番」ではなく「試験」だと考えたほうがいい設定です。
合いそうな検索語を探すためのテストであって、放置して回し続けるものではない、ということです。
検索用語レポートを開くと、たいてい驚く
広告管理画面のレポートから「検索用語レポート」を出すと、実際にどんな言葉で検索された結果、自分の広告がクリックされたのかが一覧で見られます。
ここを一度も見たことがない方は、まずこれを開いてください。たいていの場合、こんな検索語が並んでいます。
- ライバルのブランド名(買う気はあるが、あなたの商品を探してはいない)
- 「〇〇 とは」「〇〇 使い方」「〇〇 比較」(調べているだけ)
- 「〇〇 中古」「〇〇 レンタル」「〇〇 100均」(そもそも新品を買う気がない)
- サイズ違い・型番違い・用途違い(例:500mlを売っているのに「1リットル」)
- 完全に無関係な言葉(機械的な連想でヒットしてしまったもの)
これらはクリックされるほど損をする検索語です。
しかも厄介なことに、クリック率だけは悪くないことがあります(タイトルに単語が入っているので目に入る)。
だから止まらずに、じわじわ広告費を吸い続けます。
除外キーワードの候補は、感覚ではなくレポートから機械的に拾います。手順はこれだけです。
- 直近30〜60日の検索用語レポートを出す
- クリックが一定数(例:10〜15クリック)以上あって、注文が0件の検索語を抜き出す
- その中から「今後も買われる見込みがない」ものだけを除外に入れる
- 迷うものは残す(除外しすぎると、売れる検索語まで閉じてしまう)
- 1〜2週間おきに繰り返す(1回で終わらせない)
クリック数の基準は商品の単価によって変えてください。粗利が500円の商品なら、クリック単価50円で10クリックした時点で粗利と同額。
11クリック目からは赤字です。逆に粗利5,000円の商品なら、20〜30クリック様子を見る価値はあります。
「何クリックまで無駄にできるか」は、粗利額で決まります。
なお、除外には「完全一致」と「フレーズ一致」があります。
ピンポイントで1語だけ止めたいなら完全一致、「中古」を含む検索語をまとめて止めたいならフレーズ一致、という使い分けです。
ここも仕様が更新されることがあるので、実際の設定画面と公式ヘルプで確認しながら進めてください。
除外でよくある失敗は、広く効くフレーズを勢いよく入れてしまうことです。
たとえば「安い」をフレーズ一致で除外すると、「安い 水筒 保温」のような、実は買ってくれるかもしれない検索語まで一緒に消えます。
除外は、消した瞬間から売上の可能性も消す操作です。迷ったら完全一致で1語ずつ、が安全です。
除外を入れる基準と、入れすぎたときの戻し方はこちらです。


また、キーワードだけでなく商品ターゲティング(ASIN指定)側の除外も見てください。
オートで回していると、価格帯も用途も違うライバル商品のページに広告が出続けていることがあります。
ここも検索用語レポートにASINとして並ぶので、成果が出ていないものは同じ基準で止めます。
原因3:商品ページが弱くて関連性が低い


ここが、いちばん見落とされていて、いちばん効く場所です。
広告の設定画面ばかり見ていると忘れがちですが、広告はお客さんを商品ページまで連れてくるところまでしか仕事をしません。
そこから先、買うかどうかを決めているのは商品ページです。広告費が高いという悩みの半分くらいは、実は広告の外にあります。
前に書いたとおり、Amazonの広告は入札額だけでなく関連性や購入の見込みも考慮されると説明されています。
ということは、商品ページが弱いと、次のようなことが同時に起きます。
- 関連性が低いと判断され、同じ枠を取るのにより高い入札が必要になりやすい
- クリックされても買われないので、1注文あたりの広告費が跳ね上がる
- 売れないので広告の実績データが貯まらず、改善の材料も増えない
つまり、広告は商品ページの弱さを「増幅する装置」です。弱いページに広告をかけると、弱さがそのまま金額になって返ってきます。
広告を触る前に、最低限そろえておきたい5点
凝ったことをする必要はありません。次の5つが埋まっているかだけ、先に確認してください。
- メイン画像:白背景で、商品が何なのか一瞬で分かる。サムネイル一覧の中で埋もれていないか
- サブ画像:サイズ感・使用シーン・付属品・素材が分かる。最低でも5〜6枚
- タイトル:狙っている検索語が自然に入っている。単語の羅列になっていない
- 箇条書き(商品の特徴):5行埋まっていて、1行目に一番の強みが来ている
- レビュー:星の数と件数。ゼロ件なら、まず広告よりレビュー獲得の設計を優先する
特にレビューはシビアです。
ライバルが星4.3・レビュー200件のところに、レビュー0件の商品を広告で並べても、クリックはされても買われません。
この状態で広告費を投じるのは、穴の空いたバケツに水を注ぐのと同じです。
また、タイトルと狙っているキーワードのズレも大きな要因です。
「保温 水筒」で広告を出しているのに、タイトルに「保温」の一文字も入っていない——これでは関連性が伝わりません。
広告で狙う言葉は、商品ページ側にも書いてある状態にそろえてください。
それともう1点、意外な落とし穴がカートの取得状況です。
相乗り出品などでカートを取れていない状態だと、そもそも広告が配信されないか、配信されても購入までつながりにくくなります。
「設定は合っているのに表示回数が伸びない」ときは、入札より先にカートの状況を確認してください。
価格も関連性と同じくらい効きます。ライバルが2,980円で並んでいる棚に3,980円で広告を出せば、クリックはされても買われません。
購入率が低い原因の多くは、広告ではなく価格と見せ方です。
「広告を出しているのに売れない」という状態全般については、こちらの記事でも掘り下げています。


原因4:入札戦略の選び方を間違えている


設定画面をあまり見ずに作ったキャンペーンは、ここで無自覚に広告費を増やしていることがあります。
スポンサープロダクト広告のキャンペーン設定には、「キャンペーンの入札戦略」という項目があります。
ここには大きく3つの選択肢が用意されていると説明されています。
| 入札戦略 | ざっくりした性格 | 広告費への影響 |
| 動的な入札 ── ダウンのみ | 売れそうにないときは自動で入札を下げる | 最も抑えめ。守りの選択 |
| 動的な入札 ── アップとダウン | 売れそうなときは入札を引き上げる | クリック単価が設定額を上回ることがある |
| 固定入札 | 設定額のまま、自動調整しない | 読みやすいが、機会損失も出やすい |
問題は「アップとダウン」です。
これは売れる見込みが高いと判断された場面で入札を自動的に引き上げる設定で、うまくハマれば強い一方、気づかないうちにクリック単価が想定を超えていくことがあります。
「入札を50円に設定しているのに、実績を見たらCPCが80円」という現象は、ここが原因になっていることがあります。
広告費を抑えたい局面なら、まずは「ダウンのみ」に寄せるのが素直な選択です。攻めるのは、その商品で勝てると分かってからで十分です。
※各戦略の正確な挙動や引き上げ幅の仕様は変更されることがあるため、実際の設定前に公式ヘルプをご確認ください。
そしてもう一つ、同じ設定画面にあるプレースメント(掲載枠)ごとの入札調整も要注意です。
ここは「見落としがちなのに、金額へのインパクトが大きい」場所です。
これは「検索結果の最上部に出すときは入札を◯%上乗せする」といった設定で、100%と入れれば、その枠でのクリック単価は最大で2倍になり得ます。
検索結果の最上部はよく売れる枠なので、上乗せ自体は間違いではありません。
ただ、「とりあえず50%」「なんとなく100%」で入れたまま忘れている、というケースはよくあります。
広告費が高いと感じたら、まずここに数字が入っていないかを確認してください。
入札額そのものより、こちらのほうが効いていることがあります。
判断材料は、レポートで見られる掲載枠ごとの成果です。最上部のACOSが他の枠より明らかに悪いなら、上乗せ率を下げる。
逆に最上部だけ突出して良いなら、上乗せを残す。感覚ではなく、枠ごとの数字で決めます。
なお、上乗せ率を変えるときも一気に動かさないでください。
100%を0%にすると、その枠にほぼ出なくなって売上が急に消えることがあります。
100%→50%→30%のように段階的に下げて、注文数がどう動くかを見るのが安全です。
広告費を下げる順番(いきなり入札を下げてはいけない理由)


ここまでで原因が4つ出そろいました。では、どれから手を付けるか。
順番を間違えると、冒頭の吹き出しのように「広告費は下がったが売上も落ちた」という結果になります。
なぜ入札を先に下げると失敗しやすいのか
入札を下げるという操作は、良いクリックも悪いクリックも、区別なく同じ割合で減らす行為です。
あなたの広告費の中には、利益を生んでいるクリックと、1円も生んでいないクリックが混ざっています。
入札を一律で下げると、その両方が同時に減ります。
結果、広告費は3割減ったけれど売上も3割減った、という「何も改善していない」状態になりがちです。
正しいのは、まず悪いクリックだけを止め、次に構造を整え、最後にどうしても高い部分を入札で調整するという順番です。
- ①除外キーワード:買われない検索語を止める。売上を減らさずに広告費だけ減る、唯一に近い打ち手
- ②プレースメントの上乗せ確認:不用意な◯%が入っていないか。設定を見るだけなので5分で終わる
- ③入札戦略の見直し:「アップとダウン」を「ダウンのみ」へ寄せるか判断する
- ④キャンペーンの分割:ビッグ/ミドル/スモールを分け、予算配分を変えられる形にする
- ⑤商品ページの改善:画像・タイトル・箇条書き。効果は遅れて出るが、いちばん深く効く
- ⑥入札額の調整:ここでようやく触る。しかもキーワード単位で、成果が悪いものだけ
この順番には理由があります。①〜③は売上をほとんど減らさずに広告費だけを削れる打ち手です。④⑤は時間はかかりますが、根本を直します。
⑥は効果が確実な代わりに、売上への副作用が最も大きい。だから最後に置いています。
そして、一度に複数を同時に変えないこと。これも大事です。
除外とプレースメントと入札を同じ日に全部いじると、翌週に数字が動いたとき、どれが効いたのか分からなくなります。
1週間から2週間に1つずつ。焦る気持ちは分かりますが、原因の切り分けができない改善は、次に活かせません。
また、入札額を実際に下げるときは一気に半分にしないほうが無難です。10〜20%ずつ動かして、表示回数がどう変わるかを見る。
表示回数が急に消えたら、下げすぎのサインです。
具体的な進め方のイメージを、4週間のスケジュールにするとこんな形です。
| 週 | やること | 見る数字 |
| 1週目 | 検索用語レポートを出す/除外を10〜20語入れる/掲載枠の上乗せを確認 | クリック数・購入率 |
| 2週目 | 入札戦略を確認(必要ならダウンのみへ)/売れている語を完全一致で切り出す | クリック単価・ACOS |
| 3週目 | キャンペーンをビッグ/スモールに分け、予算配分を寄せる | キャンペーン別ACOS |
| 4週目 | 成果の悪いキーワードだけ入札を10〜20%下げる | 表示回数の変化 |
※これも一例です。商品数やクリック数が少ない場合は、判断に必要なデータが貯まるまで期間を長めに取ってください。
データが少ない状態での判断は、ほぼ運です。
どこまで下げるべきか(損益分岐点の考え方)


「広告費を下げる」と言っても、ゴールがなければ止まりどころが分かりません。ここで必要なのが損益分岐ACOSという考え方です。
ACOSは「広告費 ÷ 広告経由の売上」で計算される指標です。
ACOS30%なら、1万円売れて広告費が3,000円、という意味になります。
そして損益分岐ACOSとは、「これを超えたら赤字になるACOS」のこと。数字としては、その商品の粗利率とほぼ同じになります。
実際に計算してみる(架空のモデル計算)
販売価格3,000円の商品で計算します。以下の手数料率・金額はすべて説明用の仮の数字です。
ご自身のカテゴリの実際の手数料に置き換えてください。
| 販売価格 | 3,000円 |
| 仕入れ値 | −1,200円 |
| 販売手数料(10%と仮定) | −300円 |
| FBA配送代行手数料(小型と仮定) | −450円 |
| 在庫保管手数料・その他(仮) | −50円 |
| 広告費を引く前の粗利 | 1,000円 |
| 粗利率=損益分岐ACOS | 約33% |
※Amazonの各手数料には別途消費税がかかるため、実際の粗利はこの表より少なくなります。
安全側で見るなら、手数料の合計に1割ほど上乗せして計算しておくと安心です。
この商品の場合、ACOSが33%を超えた瞬間、その広告は赤字です。
逆に言えば、ACOS33%までは「トントン」であって、まだ利益はゼロ。
ここを勘違いして「ACOS30%なら優秀」と思い込むと、いつまでも手元にお金が残りません。
目標ACOSは、損益分岐より一段下に置く
では目標をどこに置くか。私は、損益分岐ACOSの半分から3分の2あたりを目安に置くのがバランスが良いと考えています。
上の例なら、目標ACOSは17〜22%です(33%の半分が約17%、3分の2が約22%)。
理由は3つあります。
- 返品・破損・値下げなど、計算に入れていない目減りが必ず発生するから
- 広告経由以外の売上(自然検索)もあるので、全体で見れば余裕が生まれるから
- 目標がトントンだと、悪化したときに気づくのが遅れるから
ただし、これは「利益を取りにいく段階」の話です。
出品したばかりでレビューも販売実績もない立ち上げ期は、あえて損益分岐を超えるACOSで回して、売上実績とレビューを積むという判断もあり得ます。
「いま何のために広告を出しているのか」で、許容できるACOSは変わります。
大事なのは、その判断を意識してやっているかです。目的を決めずに「なんとなく赤字」なのが、いちばん良くありません。
もうひとつ、慣れてきたら見てほしいのが広告費 ÷ 全体の売上で計算する指標です(TACOSと呼ばれることがあります)。
ACOSは広告経由の売上だけで計算するため、広告が自然検索の売上を押し上げている効果が見えません。
ACOSは悪化しているのに、店全体の利益は増えているということが実際に起こります。
広告単体で赤字か黒字かだけを見ていると、その商品を伸ばす判断ができなくなります。
それでも広告費が下がらないときに疑うこと


順番どおりにやっても数字が動かない場合、次のどれかが起きていることが多いです。
- キャンペーンの本数が多すぎる:似た構成のキャンペーンを何本も走らせていると、予算とデータが分散して、どれが効いているのか判断できなくなります。1本あたりのクリック数が少ないと、良し悪しを決める材料も貯まりません。まずは本数を絞り、成果の出ている構成に予算を寄せます。
- 評価する期間が短すぎる:数日の数字で判断すると、たまたまの偏りに振り回されます。最低でも1〜2週間、できれば30日単位で見ます。
- 商品そのものが広告に向いていない:粗利額が数百円の商品は、そもそも1クリック50円の広告に耐えられません。この場合は広告ではなく商品選定の問題です。
- 季節・イベントで相場が上がっている:セール期や年末は、多くの広告主が入札を上げるため、同じ設定でもクリック単価が上がります。相場の変動と、自分の失敗を混同しないことです。
特に3つ目は残酷ですが、大事な視点です。
広告で赤字になる商品は、広告の設定を直しても黒字にならないことがあります。その場合、正しい打ち手は「広告を止めて、別の商品に予算を移す」です。
撤退の判断も、立派な改善のひとつだと思っています。
広告を止めるかどうかで迷ったときは、「この商品に広告を出さなかったら、月にいくら売れるか」を考えてみてください。
広告なしでも一定数売れるなら、広告は上乗せの道具として使えます。
広告を止めた瞬間に注文がゼロになる商品は、広告に依存しているのではなく、そもそも棚の中で選ばれていないという状態です。
直すべきは広告費ではありません。
あわせて読んでおくと、つまずきにくくなります。


まとめ:広告費が高いのは「入札」ではなく「選び方」の問題


長くなったので、要点を整理します。
- 「広告費が高い」は、単価が高い/無駄クリックが多い/利益が薄い、の3つに分かれる
- クリック単価を決めているのは、自分の入札額ではなくライバルの入札と関連性
- ビッグキーワードで正面から戦うと、注文数が同じでも広告費が数倍になり得る
- 除外キーワードは、売上を減らさずに広告費だけ削れる数少ない打ち手
- 商品ページが弱いと、広告費は構造的に高くなる
- 下げる順番は「除外 → 掲載枠 → 入札戦略 → 分割 → ページ → 入札額」
- 止まりどころは、粗利率から計算した損益分岐ACOSで決める
こうして4つの原因を並べてみると、根っこは1つに見えてきます。
「広告の設定が悪い」のではなく、「広告に頼らないと売れない状態のまま、広告を出している」ということです。
ビッグキーワードで戦ってしまうのも、除外が甘くて無駄クリックが積み上がるのも、関連性が低くて単価が上がるのも──
もとをたどれば、「この商品を、どの検索語の人に、なぜ買ってもらうのか」が決まっていないことから来ています。
決まっていないから、広く出して、広く外して、その分だけ請求が来る。
逆に言えば、狙いさえ決まっていれば、広告は驚くほど素直に反応します。
出す場所が正しければ、同じ予算でも注文数は変わりますし、関連性が上がればクリック単価も落ち着いていきます。
広告費は「削るもの」ではなく、「狙いを決めた結果として下がるもの」だと考えたほうが、結果的に早いです。
私がいま優先しているのは「入札を下げる」より「狙いを絞る」ほうです
だから私は、広告費が重いと感じたときに最初に入札額へ手を伸ばすのをやめました。
代わりにやっているのは、「誰に売るか」を狭く決めて、その検索語だけに広告を集中させるやり方です。
検索用語レポートで買われている言葉を洗い出し、買われていない言葉を止め、勝てる言葉のキャンペーンだけを育てていく。
地味ですが、これがいちばん確実でした。
- 入札の殴り合いから降りられる → クリック単価が上がりにくくなる(原因1の解決)
- 買う気のない検索に出なくなる → 無駄クリックが減る(原因2の解決)
- 狙う言葉が決まるので商品ページも直しやすい → 関連性が上がる(原因3の解決)
- 売上を落とさずに広告費だけを削れるので、手元に残る額が変わる
もちろん、正直なデメリットもあります。このやり方は手間がかかります。
検索用語レポートを毎週開いて、数字を見て、少しずつ除外を足していく作業は、正直おもしろいものではありません。
入札を一括で下げるほうが、作業としては何倍も速いのは事実です。ただ、速い方法は売上ごと削る方法でもあります。
手間をかけた分だけ、削れるのが「無駄なところだけ」になっていきます。
「自分の広告が3つの症状のどれなのか判断できない」「除外を入れたいが、どこまで切っていいか怖い」という方は、よければ一度ご相談ください。
実際の管理画面の数字を見ながら、どこから手を付けるのがいちばん早いかを一緒に整理します。
無理に何かを売り込むことはしませんので、気軽にどうぞ。
広告費そのものをいくらまで出していいかは、こちらで整理しています。


下げたあと、数字をどう読むかはこちらです。








