Amazonで商品が少しずつ売れ始めると、次に必ず出てくるのが広告の話です。
調べてみると、どのサイトにも同じことが書いてあります。「出品しているなら誰でもやるべき」「設定は数分で終わる」「やらないと売れない」。
それでも手が出せない方が多いのは、こういう不安があるからだと思います。
- 出したら赤字になりそうで怖い
- いくら使っていいのか分からない
- どうなったら止めればいいのか分からない
- そもそも自分の商品に広告が必要なのかが分からない
この不安は、正しいです。むしろ、何も考えずに始めるより健全だと思っています。
結論から書きます。「誰でもやるべき」ではありません。広告を出しても無駄になる商品は、はっきり存在します。
そして、それは出す前に計算で分かります。広告を回してみて損してから気づくのではなく、始める前に判定できるということです。
この記事では、その判定に使う3つの数字と、実際の出し方を書きます。難しい計算は出てきません。電卓があれば足ります。
- 広告を出す前に確認する3つの数字と、その出し方
- 「ACoS 30%が目安」という数字を、そのまま使ってはいけない理由
- 広告を出しても無駄になる商品の見分け方
- 広告より先にやったほうがいいこと
- 出すと決めたとき、いくらから始めればいいか
- 最初の赤字とどう付き合うか
「誰でもやるべき」と言われる理由と、その落とし穴

まず、そう言われる理由は理解できます。
Amazonの広告(スポンサープロダクト広告)は、商品ページの画像と文章がそのまま使われます。
バナーを作る必要も、キャッチコピーを考える必要もありません。出品している商品を選んで、予算と入札額を決めるだけで始まります。
始めるハードル自体は、たしかに低いのです。
問題はそのあとです。始めるのが簡単なことと、続けるべきかどうかは別の話だからです。
広告は「利益の一部を払って、見つけてもらう」仕組み
当たり前のことですが、広告費は自分の利益から出ていきます。
1個売れて500円残る商品なら、広告費に500円かけた時点で利益はゼロです。600円かければ赤字で、売れば売るほど損が増えます。
逆に1個売れて2,000円残る商品なら、広告に800円使っても1,200円残ります。この場合は、多少高くついても出したほうが得です。
同じ「広告を出す」でも、商品によって意味がまるで違います。だから「誰でもやるべき」とは言えないのです。
「やらないと売れない」も、半分は本当
誤解のないように書いておくと、広告そのものを否定しているわけではありません。
Amazonの検索結果は、上のほうに広告が並びます。新しく出品した商品は、そのままでは検索結果の下のほうに埋もれます。
誰にも見られなければ、当然売れません。売れないから順位も上がらない。この状態から抜け出す手段として、広告は有効です。
ただし、それは「その商品に広告費を払う余裕があるなら」という条件つきです。
余裕がない商品に広告を出しても、見つけてもらえた瞬間に赤字が確定します。それは「集客できている」のではなく、ただお金を配っているだけです。
そもそもAmazon広告とは(未経験の方向け)

数字の話に入る前に、仕組みだけ押さえておきます。すでにご存じの方は読み飛ばしてください。
どこに表示されるのか
Amazonで何かを検索すると、検索結果の上のほうや途中に、小さく「スポンサー」と書かれた商品が並びます。あれが広告です。
商品ページの下のほう、「この商品に関連する商品」といった欄にも表示されます。
見た目は普通の商品とほとんど同じです。お客さんは、それが広告かどうかをあまり意識せずにクリックします。だから効きます。
お金がかかるのは「クリックされたとき」だけ
ここは安心してほしいところです。
Amazonの広告はクリック課金です。表示されただけでは1円もかかりません。お客さんが実際にクリックして、自分の商品ページに来たときに初めて課金されます。
- 1,000回表示されて、誰もクリックしない → 0円
- 1,000回表示されて、10回クリックされた → 10クリック分の広告費
雑誌やチラシのように「載せるだけで数十万円」ということはありません。ここが、広告未経験の方が思っているよりずっと安全な点です。
クリック単価は「入札」で決まる
では1クリックいくらか。これは固定ではありません。
同じ検索結果に出したい出品者どうしで、いわば席の取り合いをしています。「1クリックにこれだけ払ってもいい」という金額(入札額)を高く出した人が、上のほうに表示されやすくなる仕組みです。
だから、人気のあるキーワードほどクリック単価が上がります。誰も狙っていない言葉なら安く出せます。
なお、入札額をそのまま全額払うわけではありません。実際に引かれるのは、次の順位の人を少し上回る金額です。100円で入札しても、実際は70円だった、ということが普通に起きます。
広告の種類は3つあるが、最初は1つでいい
| 種類 | 内容 | 最初にやるか |
|---|---|---|
| スポンサープロダクト | 商品1つを検索結果に出す | これだけでいい |
| スポンサーブランド | ロゴと複数商品をまとめて出す | ブランド登録が必要 |
| スポンサーディスプレイ | Amazon外にも追いかけて出す | あとで |
この記事で「広告」と書いているのは、すべてスポンサープロダクトのことです。最初はこれ以外を触る必要はありません。
最低限おぼえる用語は5つだけ
管理画面には数十の項目が並びますが、最初に見るのはこれだけです。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| インプレッション | 広告が表示された回数 |
| クリック | クリックされた回数(=お金が発生した回数) |
| CPC | 1クリックあたりにかかった金額 |
| CVR(転換率) | クリックした人のうち、買った人の割合 |
| ACoS | 広告費が、広告経由の売上の何%か |
横文字が並ぶと身構えてしまいますが、やっていることは「何回出て」「何回押されて」「いくら使って」「何個売れたか」だけです。
出す前に確認する3つの数字

確認するのは次の3つです。順番も大事なので、上から出していってください。
| 順番 | 数字 | 何が分かるか |
|---|---|---|
| ① | 粗利 | 1個売れて、いくら残るか |
| ② | 損益分岐ACoS | 広告費をいくらまで出していいか(%) |
| ③ | 転換率(CVR) | 1クリックにいくらまで払っていいか(円) |
① 粗利:1個売れて、いくら残るか
いちばん最初に出す数字です。ここが出ていないと、あとの2つは出せません。
販売価格 −(仕入値 + Amazonの販売手数料 + FBAの配送代行手数料 + その他の費用)
「その他の費用」には、Amazonの倉庫に送るときの送料・梱包材・ラベルなどを、1個あたりに割った金額を入れます。
ここでいちばん多い間違いが、手数料を「だいたい15%くらい」で済ませてしまうことです。
販売手数料はカテゴリーによって違いますし、FBAの配送代行手数料は商品のサイズと重さで決まります。同じ価格の商品でも、大きくて重い商品は手数料が跳ね上がります。
手数料の正確な出し方
セラーセントラルの「FBA料金シミュレーター」を使ってください。自分の商品のASINを入れると、販売手数料とFBA配送代行手数料の合計が出ます。
推測ではなく、実際の数字を見る。これだけで判定の精度がまったく変わります。
手数料の中身をもう少し詳しく知りたい方は、こちらの記事にまとめています。

粗利の計算例
販売価格3,000円の商品で考えてみます。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 販売価格 | 3,000円 |
| 仕入値 | −1,000円 |
| Amazon販売手数料+FBA配送代行手数料 | −900円 |
| その他(納品送料・梱包材など) | −100円 |
| 粗利 | 1,000円 |
この商品は、1個売れて1,000円残ります。この1,000円が、広告に使える上限ということになります。
(正確には、この1,000円を全部使うと利益ゼロです。実際にはここから利益を残す必要があります)
② 損益分岐ACoS:広告費をいくらまで出していいか
まず用語から説明します。
ACoS(エーコス)は、広告費が広告経由の売上の何%を占めるかを表す数字です。広告の管理画面に必ず出てきます。
ACoS = 広告費 ÷ 広告経由の売上
広告費3,000円で、広告経由の売上が10,000円なら
3,000 ÷ 10,000 = 30%
そして「損益分岐ACoS」は、これを超えたら赤字になるという線のことです。出し方はとても単純です。
粗利 ÷ 販売価格
さきほどの例(販売価格3,000円・粗利1,000円)なら
1,000 ÷ 3,000 = 33.3%
この商品は、ACoSが33.3%を超えると赤字になります。
ここが、この記事でいちばん覚えて帰っていただきたいところです。
「ACoS 30%が目安」を、そのまま使ってはいけない
ネットを調べると「ACoSは30%以内が目安」といった記述をよく見かけます。
ですが、上の計算を見ていただければ分かるとおり、その線は商品ごとに違います。3つの商品で比べてみます。
| 商品A | 商品B | 商品C | |
|---|---|---|---|
| 販売価格 | 3,000円 | 3,000円 | 3,000円 |
| 粗利 | 1,200円 | 1,000円 | 400円 |
| 損益分岐ACoS | 40.0% | 33.3% | 13.3% |
| ACoS 30%のとき | 黒字 | 黒字 | 赤字 |
同じ「ACoS 30%」でも、商品Cだけは赤字です。しかも、そこそこの赤字です。
逆に商品Aは、ACoSが35%まで上がっても黒字です。「30%を超えたから止めよう」と判断すると、まだ稼げるはずの広告を止めることになります。
他人の目安をそのまま使うと、黒字なのに止めたり、赤字なのに続けたりすることになる。これが、いちばん多い失敗です。
利益を残したいなら、線はもっと手前になる
損益分岐ACoSは「利益ゼロになる線」です。実際には、そこから利益を残したいはずです。
販売価格3,000円・粗利1,000円の商品で、10%の利益(300円)を残したいなら、広告に使えるのは700円までです。
700 ÷ 3,000 = 23.3%
つまり、運用の目標にすべきACoSは33.3%ではなく23.3%です。この数字を「目標ACoS」と呼んでいます。
| 残したい利益率 | 目標ACoS | 1個あたりの利益 |
|---|---|---|
| 0%(損益ゼロ) | 33.3% | 0円 |
| 5% | 28.3% | 150円 |
| 10% | 23.3% | 300円 |
| 15% | 18.3% | 450円 |
利益を厚く残そうとするほど、広告に使える幅は狭くなります。当たり前ですが、この関係を数字で見ておくと、後で迷いません。
③ 転換率:何人がクリックして、何人が買うか
転換率(CVR)は、クリックした人のうち何%が買ったかを表す数字です。
これが分かると、1クリックにいくらまで払っていいかが出せます。入札額を決めるときに使う数字です。
粗利 × 転換率
粗利1,000円・転換率10%なら
1,000 × 0.1 = 100円
1クリック100円を超えると、平均的には赤字になる計算です。
なぜこの計算になるのか、少し補足します。
転換率10%ということは、10回クリックされて1個売れるということです。1個売れて残るのが1,000円なので、10回のクリックに合計1,000円までなら使える。1回あたりだと100円、という計算です。
まだ広告を出したことがない場合
広告未経験の方は、当然この数字を持っていません。
その場合はいったん10%と置いて計算してみてください。実際に広告を回すと本当の数字が出るので、そのとき入れ替えます。
なお、広告を出していなくても、セラーセントラルのビジネスレポートを見れば、商品ページ全体のユニットセッション率(見た人のうち何%が買ったか)は分かります。
広告経由のCVRとは完全には一致しませんが、目安にはなります。
転換率が低いときは、広告の問題ではない
大事な話なので書いておきます。
転換率が低いということは、クリックはされているのに買われていないということです。これは広告の問題ではありません。
- 価格が競合より高い
- メイン画像が弱くて、中身が伝わらない
- レビューがない、または評価が低い
- 商品説明で不安が解消できていない
ここを直さずに広告費だけ増やすと、穴の空いたバケツに水を注ぐことになります。
広告を出しても無駄になる商品の見分け方

3つの数字が出たら、次の順番で見てください。
パターン1:粗利がマイナス、またはほぼゼロ
広告以前の問題です。売れば売るほど損が増える状態なので、広告で加速させたら被害が大きくなるだけです。
このときにやることは、広告ではありません。
- 価格を上げられないか検討する
- 仕入れ値を下げられないか検討する(ロットを増やす・仕入れ先を変える)
- 大きさや重さを見直して、FBAの手数料を下げられないか検討する
- どうにもならないなら、その商品を追うのをやめる
4番目は勇気が要りますが、必要な判断です。
パターン2:損益分岐ACoSが15%を下回る
黒字ではありますが、広告で戦うには利益が薄すぎます。
ACoS 15%以内を維持するのは、競合が多いカテゴリではかなり難しいです。実際に回してみると、ほとんどのキーワードが15%を超えてくるはずです。
この場合、広告を出すこと自体は否定しませんが、先に価格か原価を見直したほうが結果的に早いです。粗利が1.5倍になれば、広告で使える幅も1.5倍になります。
パターン3:許容CPCが数十円以下
1クリックに30円しか出せない、といった状態です。
この金額だと、そもそも表示されにくくなります。表示されなければクリックもされず、データも溜まりません。お金は減らないが、何も起きないという状態になりがちです。
「広告を出しているのに表示回数がゼロ」という相談は、これが原因であることが多いです。原因の切り分けは、こちらにまとめています。
逆に、出したほうがいい商品
次の3つが揃っている商品は、広告を出す価値があります。
- 損益分岐ACoSが30%以上ある(粗利が厚い)
- すでに自然に少しは売れている(=商品ページが機能している証拠)
- 在庫がある(売れ始めてから切らすのがいちばんもったいない)
2番目が意外と大事です。まったく売れていない商品は、広告で人を連れてきても買われない可能性が高い。まず1個でも自然に売れているかを見てください。
広告より先にやったほうがいいこと

判定の結果「まだ広告ではない」となった場合、先にやることがあります。
メイン画像を見直す
検索結果に並んだとき、お客さんが最初に見るのは画像です。ここで選ばれなければ、そもそもクリックされません。
自分の商品を検索して、競合と並べて見てください。埋もれているなら、そこが最優先です。
タイトルと箇条書きを整える
タイトルは検索に効くだけでなく、クリックするかどうかの判断材料にもなります。型番・サイズ・容量・入数など、お客さんが確認したい情報が入っているか見直してください。
価格を確認する
競合より明らかに高い状態で広告を出しても、比較されて終わりです。
ただし、値下げは粗利を削ります。値下げすると損益分岐ACoSも下がるので、広告で使える幅が狭くなる。値下げと広告は、同時にやると苦しくなります。
出すと決めたら、いくらから始めるか

いきなり大きく使う必要はありません。
最初の期間は「どの言葉で売れるか」を探す時間です。売れる言葉が見つかっていない段階で予算を増やしても、無駄な表示が増えるだけです。
まずはオートから
Amazonの広告には、大きく分けて2つの出し方があります。
| オート | マニュアル | |
|---|---|---|
| 誰が決めるか | Amazonが自動で決める | 自分でキーワードを指定する |
| 手間 | ほとんどない | キーワードを考える必要がある |
| 向いている場面 | 最初の発見段階 | 勝ちワードが分かってから |
| 無駄 | 多め | 絞れば少ない |
広告が初めてなら、まずオートからで問題ありません。キーワードを自分で考える必要がないので、始めるのが早いです。
オートを回すと、お客さんが実際に打ち込んだ言葉が「検索用語レポート」に溜まっていきます。そこから売れた言葉を見つけて、次にマニュアルで狙う。この順番が、いちばん分かりやすいです。
日予算の決め方
目安として、許容CPC × 20〜30クリック分から始めると、データが溜まる速さと出費のバランスが取りやすくなります。
| 許容CPC | 日予算の目安 | 1か月の広告費 |
|---|---|---|
| 50円 | 1,000〜1,500円 | 3〜4.5万円 |
| 100円 | 2,000〜3,000円 | 6〜9万円 |
| 150円 | 3,000〜4,500円 | 9〜13.5万円 |
少なすぎると、データが溜まるまでに時間がかかりすぎて判断できません。多すぎると、判断する前にお金が減ります。
なお、日予算は「必ず使い切る」ものではありません。表示される機会が少なければ、予算を残したまま終わります。上限を決めているだけだと考えてください。
予算の考え方や、予算が超過して見える仕組みについては、こちらで詳しく書いています。

入札額は許容CPCより低めから
許容CPCが100円だからといって、いきなり100円で入札する必要はありません。
最初はその6〜7割程度から始めて、表示回数が少なすぎるようなら上げていく。この順番のほうが、無駄が出にくいです。
最初に入れておく除外キーワード

広告を始めるとき、多くの方が見落とすのがここです。
広告は、自分が狙っていない言葉でも表示されます。とくにオートは、関係の薄い検索にも出ます。
「無料」「中古」「作り方」「修理」といった、そもそも買う気がない人の検索にも表示される。クリックされれば当然お金は減りますが、売れることはありません。
これを止めるのが除外キーワードです。最初に入れておくだけで、消えていく広告費がかなり減ります。
除外の入れ方と、入れすぎたときの直し方はこちらです。

| 種類 | 例 | 理由 |
|---|---|---|
| 買う気がない | 無料/タダ/作り方/自作/修理/直し方 | そもそも買わない |
| 中古を探している | 中古/ジャンク/訳あり/アウトレット | 新品を売っている場合は不要 |
| 他の店で買う | 楽天/メルカリ/店舗/どこで売ってる | Amazonで買うつもりがない |
| 調べているだけ | とは/意味/読み方 | 購入段階ではない |
ただし、注意点があります。
- 中古品を売っているなら「中古」を除外してはいけません
- 商品名に「フリー」が含まれる場合(フリーサイズなど)は除外しない
- 除外しすぎると、売れるはずだった検索も止まります
入れたあとは必ず数字を見て、売上が落ちていないか確認してください。
実際に始めるときの手順

ここまでの内容を、実際の作業順にまとめます。
STEP1:数字を出す(広告を触る前)
FBA料金シミュレーターで手数料を確認し、粗利・損益分岐ACoS・許容CPCを出します。
ここで「出さない」という結論が出たら、広告の画面を開く必要はありません。この段階で止められるのが、いちばん安上がりです。
STEP2:商品ページを整える
メイン画像・タイトル・箇条書き・価格を確認します。競合と並べて見て、明らかに見劣りする部分があるなら先に直します。
STEP3:オートのキャンペーンを1つ作る
設定するのは実質この3つだけです。
- 広告を出す商品を選ぶ(最初は1〜2個)
- 1日の予算を入れる(許容CPC × 20〜30)
- 入札額を入れる(許容CPCの6〜7割)
終了日は設定せず、期間の区切りは自分の頭の中で持っておくほうが扱いやすいです。
STEP4:除外キーワードを入れる
先ほどの表を参考に、明らかに買わない人の言葉を入れておきます。開始前に入れておくと、最初の数日の無駄が減ります。
STEP5:しばらく触らない
ここがいちばん難しいところです。
始めた翌日に数字を見て、入札額を上げたり下げたりしたくなります。ですが、データが少ないうちに動かすと、何が効いたのか分からなくなります。
「クリックが◯回溜まるまでは触らない」と決めて、その間は見るだけにしてください。
出したあと、最初に見る数字

広告を出したあと、何を見て何を判断するか。順番に書きます。
まず「表示されているか」
インプレッションがほぼゼロなら、そもそも土俵に上がれていません。入札額が低すぎるのが原因であることが多いです。
ここで許容CPCを超えてまで上げるかどうかは、慎重に判断してください。上げれば表示されますが、上げた先が赤字ゾーンなら意味がありません。その場合は「この商品は広告に向いていない」という答えです。
次に「クリックされているか」
表示はされているのにクリックされない場合、原因は画像・価格・レビューです。広告の設定ではありません。
検索結果に自分の商品を並べて見て、選ばれない理由を探してください。
次に「買われているか」
クリックはされているのに買われないなら、商品ページの中身の問題です。
お客さんは、クリックしてページを開いた時点で「ちょっと気になった」状態です。そこで買わなかったということは、ページの中で不安が解消できなかったということです。
最後にACoSを見る
売れているなら、ACoSを損益分岐ACoSと比べます。
| 状態 | 意味 | やること |
|---|---|---|
| ACoS < 目標ACoS | 狙いどおりの利益が出ている | 予算を増やすことを検討 |
| 目標 < ACoS < 損益分岐 | 黒字だが薄い | 無駄なキーワードを削る |
| ACoS > 損益分岐ACoS | 赤字 | 立ち上げ期なら様子見。期間を過ぎたら見直す |
大事なのは、この表を見る前に自分の損益分岐ACoSを出しておくことです。線がなければ、どの行に当てはまるかも分かりません。
検索用語レポートを見る
ある程度データが溜まったら、検索用語レポートを開いてください。お客さんが実際に打ち込んだ言葉が一覧で出てきます。
そのレポートの出し方と、見る列の絞り方はこちらにまとめました。

ここで見るのは2種類だけです。
- 売れた言葉 → マニュアルで狙う候補
- クリックされているのに売れていない言葉 → 除外の候補
この2つを繰り返すのが、Amazon広告の運用の中身です。派手なテクニックがあるわけではありません。
最初の赤字は普通。ただし「いつまで」を決めておく

広告を出したばかりの時期は、ACoSが100%を超えることも珍しくありません。
レビューも実績もなく、Amazon側もどの検索に出せばいいか分かっていない状態なので、当然です。
ここで多くの方が「やっぱり赤字だ」と広告を止めてしまいます。これがいちばんもったいないと考えています。せっかく集まりかけたデータも、そこで消えるからです。
- 損益分岐ACoSを出す(赤字になる線を知る)
- 立ち上げの期間は、そこを超えることを織り込んでおく
- 何日目までにどこまで下げるかを、始める前に決めておく
- その期間に、いくらまでの持ち出しなら許容できるかを決めておく
この4つを決めてから始めると、数字が悪く見えても慌てなくなります。「計画どおり」だと分かるからです。
逆に決めずに始めると、毎日の数字に振り回されます。判断の基準がないので、止めるか続けるかを気分で決めることになります。
どの期間に何%まで許容するかは、商品の価格帯・カテゴリ・在庫量・競合の強さによって変わります。ひとつの正解はありません。ただ、「決めてから始める」ことだけは、どの商品でも共通です。
広告は、広告経由の売上だけを増やすわけではない

もうひとつ、最初に知っておくと判断が変わる話があります。
ACoSは「広告経由の売上」だけを分母にした数字です。ですが実際には、広告を出すと広告以外の売上(自然に検索されて売れる分)も動きます。
売れると、検索順位が上がる
Amazonの検索結果は、売れている商品ほど上に出やすくなります。
広告で売れると、その実績が積み上がって、広告を出していない自然な検索でも上に出るようになる。すると広告費をかけずに売れる分が増えていきます。
つまり広告は、「今の売上を買う」だけでなく「あとで自然に売れる状態を作る」ための投資でもあるということです。
だから立ち上げ期は、多少高くても許容できる
この効果があるので、立ち上げ期にACoSが損益分岐を超えていても、すぐに失敗とは言えません。
ただし、これは言い訳にも使える理屈です。「いずれ効いてくるはず」と言い続けて、半年赤字を垂れ流すこともできてしまいます。
だからこそ、最初に期間と金額の上限を決めておく必要があるのです。
全体で見る癖をつける
広告の画面のACoSだけを見ていると、この波及分が見えません。
セラーセントラルの売上全体と広告費を並べて、「売上全体のうち広告費が何%か」という見方もしてみてください。広告経由だけで見ると悪く見える商品が、全体で見ると十分に成立していることがあります。
未経験の方がやりがちな失敗

最後に、最初につまずきやすいところをまとめます。
失敗1:計算せずに始める
この記事の主旨そのものです。上限を知らないまま始めると、数字を見ても良いのか悪いのか判断できません。
判断できないので、感覚で止めたり増やしたりすることになります。
失敗2:毎日いじる
入札額を毎日変えると、どの設定が効いたのか分からなくなります。
数日の数字は、たまたまの偏りが大きいです。少ないデータで判断すると、間違った方向に動かしてしまいます。
失敗3:赤字が出た瞬間に全部止める
止めると、それまでのデータも積み上げも止まります。しばらくして再開すると、また同じところからやり直しです。
止めるにしても、「全部止める」ではなく「無駄なキーワードだけ止める」のほうが損が少ないです。
失敗4:たくさんの商品に一度に出す
予算が分散して、どれもデータが溜まりません。しかも見る数字が増えて、手が回らなくなります。
まず1商品で型を作ってから広げるほうが、結果的に早いです。
失敗5:他人の目安をそのまま使う
「ACoS 30%以内」「CPC 50円まで」といった数字は、その人の商品での話です。
粗利も価格もカテゴリも違えば、線の位置は当然違います。自分の商品の数字は、自分で出すしかありません。
失敗6:在庫を切らす
広告でようやく売れ始めた商品が在庫切れになると、積み上げた順位が落ちます。広告費だけ払って、成果だけ手放すことになります。
広告を出すなら、在庫の残りと補充の時期を同時に見てください。
よくある不安に答えます

広告の管理画面を見たこともありません
最初はオートから始めるのが現実的です。選ぶのは「商品」「1日の予算」「入札額」の3つだけで、キーワードを自分で考える必要はありません。
用語が多く見えますが、実際に毎日見る数字は表示回数・クリック数・広告費・注文数・ACoSの5つくらいです。
数字を見るのが苦手です
計算はスプレッドシートにやらせれば済みます。入れるのは、販売価格・仕入値・手数料といった手元にある数字だけです。
ただし、出てきた数字を見て判断するところは、ご自身でやる必要があります。そこだけは避けられません。
在庫が少ないのですが、出していいですか
おすすめしません。
広告で売れ始めたあとに在庫を切らすと、それまでに積み上げた掲載順位も落ちます。再開したときは、また最初からやり直しに近い状態になります。在庫が確保できてから始めたほうが、結果的に無駄が少なくなります。
商品ページが整っていなくても大丈夫ですか
先にページを整えてください。
広告はあくまで「見てもらう」ところまでしかできません。ページが弱いと、クリックされても買ってもらえず、広告費だけが減ります。
どれくらいで結果が分かりますか
判断できるだけのデータが溜まるまでに、ある程度の期間とクリック数が必要です。数日の数字を見て慌てて止めるのは、いちばんもったいない使い方です。
「クリックが◯回溜まるまでは触らない」と決めておくと、判断が安定します。
複数の商品を同時に出してもいいですか
最初は1〜2商品に絞ることをおすすめします。
同時に多く出すと、予算が分散してどれもデータが溜まりません。しかも見るべき数字が増えて、判断が追いつかなくなります。まず1商品で型を作ってから増やすほうが早いです。
まとめ

- Amazon広告は「誰でもやるべき」ではない。出しても無駄になる商品はある
- 出す前に確認するのは3つ。粗利・損益分岐ACoS・転換率
- 損益分岐ACoS=粗利 ÷ 販売価格。これを超えたら赤字
- 許容CPC=粗利 × 転換率。これが入札の上限
- 「ACoS 30%が目安」は他人の数字。自分の商品の線を出す
- 粗利がほぼゼロ/損益分岐ACoSが15%未満なら、広告より先に価格か原価を見直す
- 始めるときは少額から。日予算は許容CPC × 20〜30クリック分が目安
- 除外キーワードは最初に入れておく
- 立ち上げ期の赤字は普通。何日目までにどこまで下げるかを先に決める
広告が怖いのは、上限を知らないからです。
上限さえ分かっていれば、その範囲で試すだけなので、怖がる理由がなくなります。逆に上限を知らないまま始めると、いくら使っても不安が消えません。
まずはご自身の商品で、粗利と損益分岐ACoSを出してみてください。それだけで「出すべきかどうか」の答えは、かなりはっきりします。
広告を出したあと「思ったより売れない」という段階に進んだ方は、こちらもあわせてどうぞ。

本業を持ちながら広告を回せるのか、時間の面はこちらで書いています。

予算が増えてきたときの考え方は、別の記事にまとめました。



